オランダ地名のカナ表記

Descrittione di M. Lodouico Guicciardini patritio fiorentino di tutti i Paesi Bassi 1567

Lodouico Guicciardini (1567) Descrittione di Tutti i Paesi Bassi In Wikimedia Commons

オランダ史は日本では昔からマイナーでした。そのため、かならずしもオランダ専門家によって紹介されてきたわけではなく、特殊な用語の訳出やカナ表記が研究者によってまちまちだったり、誤ったものが多用され、無批判のまま使い続けられてきました。オランダ史は、ドイツ史同様、オランダでしか用いない役職や専門用語が非常に多いです。

このウェブサイトでは訳語とカナ表記を、基本的には下記文献に合わせています。過去に管理人の指導教官(オランダ経済史専門)と話し合いのうえ決定したものの踏襲です。

 

  • 『身分制国家とネーデルランドの反乱』川口博 彩流社 「予備的考察」
  • 『講談社オランダ語辞典』講談社

おもな地名

Claes Jansz. Visscher (II) - Lion Map (Leo Belgicus) - WGA25145

Claes Jansz. Visscher (1609) “Leo Belgicus” In Wikimedia Commons
オランダの地図をライオンの形に模した「レオ・ベルギクス」

国名・州名

  • Nederlanden ネーデルランド/ 「低地諸州」(複数形)。北部・南部の総称。語尾の「en」は曖昧なため、「ド」と表記するようです。
  • Holland ホラント/ 「オランダ」の名の由来にもなった最有力州。北ネーデルランドの予算の約6割を捻出していました。
  • Zeeland ゼーラント/ ホラントに次いで有力な州。その名のとおり海沿いの州。当時のオランダでは海運=富でした。現在の「ニュージーランド」の語源となった地名です。
  • Friesland フリースラント/ 北部海岸沿いの州。フリース語という特殊な言葉が話されています。
  • Groningen フロニンゲン/ フリースと並ぶ最北部の州。
  • Utrecht ユトレヒト/ 北ネーデルランド中央の州。
  • Gelderland ヘルデルラント/ ユトレヒトの隣。ドイツ国境沿い。
  • Overijsel オーフェルエイセル/ ヘルデルラントの北。ドイツ国境沿い。
  • Drente ドレンテ/ フロニンゲンとオーフェルエイセルに挟まれた地方。17世紀当時はもっとも貧しい州とされました。
  • Ommelanden オメランデン/ ドレンテの中でもとくに田園地方をこう呼ぶことがあります。
  • Brabant ブラーバント/ 現ベルギー。ブリュッセル・アントウェルペンなど有力な都市のある州。ウェブサイト内では、日本語として一般的な「ブラバント」で書いています。
  • Vlaanderen フラーンデレン/ 現ベルギー。フランドル。「フランダースの犬」の舞台。独立後の共和国が何度も獲得に挑んだが失敗。ウェブサイト内では、日本語として一般的な「フランドル」で書いています。

ホラント州諸都市

  • Den Haag デン=ハーフ/ ネーデルランド連邦共和国首都機能をもつ。英語でいうと「ハーグ The Hague」。連邦議会がありました。現在も行政府。ウェブサイト内では、日本語として一般的な「ハーグ」で書いています。
  • Amsterdam アムステルダム/ 今も昔も商人の街。16世紀末のアントウェルペン衰退に伴い、海運で栄えた都市。
  • Delft デルフト/ オランイェ公の居館と墓所があり、ウィレム一世が暗殺された場所。ロイヤルシティのひとつ。
  • Leiden レイデン/ 1574年の籠城戦で有名。その勝利を祝して建てられたオランダ最古の大学があります。英語読みではライデン。
  • Dordrecht ドルトレヒト/ 1618年に全国教会公会議が開催されました。共和国内の宗教対立にいちおうの終止符がうたれることになります。

ゼーラント州諸都市

  • Breda ブレダ/ 正確に言うとゼーラントではなく、連邦共和国直轄領。南部との境界にあったため、何度も占領・奪還が繰り返されました。 『ブレダの開城』も参照。
  • Den Briel デン=ブリール/ ゼーラントの街は境界線上にあるため、ここも何度か占領・奪還が繰り返されています。八十年戦争前期では象徴的な街。(デン=ブリール占領
  • Vlissingen フリシンゲン/ 海岸沿いの街。16世紀にはイングランドとの国交に用いられたことが多い都市。

南部諸州諸都市

  • Antwerpen アントウェルペン/ 16世紀の前半、海運で非常に栄えた街。1585年のスヘルデ川の閉鎖により、その地位をアムステルダムに譲ることになりました。
  • Brussel ブリュッセル/ 現ベルギー首都。近世を通じて、スペインのネーデルランド行政府があったのはこの街。
  • Ghent ヘント(ガン)/ 「ガン」はフランス語表記。いずれも用いられます。1576年の和平条約が結ばれた場所。
  • Nieuwpoort ニーウポールト 1600年の戦いで有名。同時に、16世紀の共和国軍の軍事的成功の最後の場所。

中部・北部諸州諸都市

  • Leeuwarden レーワルデン/ フリースの首都。フリースラントのみが、最後までオランイェ家の当主を州総督に任命しませんでした。
  • Utrecht ユトレヒト/ オランダの中心にある街。州名と街名が同じ。現在はここをハブにすれば国内どこへでも2時間くらいで行くことが可能。北部七州と南部十州の決定的分裂を意味する「ユトレヒト同盟」(1579年)が締結された場所。

河川・湖沼

  • Zuidel Zee ゾイデル海/ 海というよりも湾。アムステルダム港はここに面しています。アムスの繁栄とともに通商の中心となりました。
  • Schelde スヘルデ川/ 河口にアントウェルペンをもち、フラーンデレン地方に伸びる川。この河口が閉鎖されたことで、アントウェルペンは衰退していきます。
  • Ijessel エイセル川/ ドイツとの国境を流れる川。1590年代、共和国軍はこの川沿いの街をスペインより奪還し、国境を確定しました。
  • Maas マース川/ ライン川の支流。こちらは南部ネーデルランドとの境界。

その他

  • Binnenhof ビネンホフ/ デン=ハーフの連邦議会のある建物。1593年以降は歴代州総督の居館でもあった場所です。 一般名詞としては「中庭」。

おもな歴史用語

※「オランダ史の歴史用語」へ

おもな人名

※「八十年戦争 人物一覧」へ

リファレンス

記事中に挙げた参考URL以外については以下のとおり。

  • 佐藤弘幸『図説 オランダの歴史』、河出書房新社、2012年
  • 桜田三津夫『物語 オランダの歴史』、中公新書、2017年
  • 森田安一編『スイス・ベネルクス史(世界各国史)』、山川出版社、1998年
  • 川口博『身分制国家とネーデルランドの反乱』、彩流社、1995年
  • 栗原福也「十六・十七世紀の西ヨーロッパ諸国 二 ネーデルラント連邦共和国」『岩波講座 世界歴史(旧版)<15>近代2』、岩波書店、1969年