Unknown (after 1626) ハウス・ラーゲ In Wikimedia Commons
対戦国 |
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勝 敗 | ○ | × |
参加者 | ナッサウ伯エルンスト=カシミール (オランイェ公フレデリク=ヘンドリク) |
ギリェルモ・ベルデューゴ (ファン・デン=ベルフ伯ヘンドリク) |
「生まれながらのオランイェ公」、後継ぎのウィレム二世が生まれた直後、フレデリク=ヘンドリクは東部遠征に向けて軍を出した。標的は「スペイン野盗の巣窟」オルデンザール。フレデリク=ヘンドリクは、自らはスペイン軍に身を置く従兄ファン・デン=ベルフ軍の牽制となりつつ、オルデンザールの奪還は全幅の信頼を置く従兄エルンスト=カシミール将軍に預けた。
エルンスト=カシミール伯は、ものの数日でオルデンザールを陥とし、さらに城ひとつ手土産にして、彼の「娯楽」から僕のキャンプへ帰還した。
オランイェ公フレデリク=ヘンドリク/ Picart, “Memoires”
経緯
前年の1625年、オランイェ公を継いだものの、その父祖の地ブレダの救援に失敗してしまったフレデリク=ヘンドリクは、翌年より反攻を開始します。まずは議会と諮り、1605-1606年にスピノラ侯によって奪われた東部国境のうち、より重要な2都市、オルデンザールとフロールの奪還を計画します。とくにオルデンザールは、この街を拠点に盗賊や傭兵崩れが周辺地域の略奪を繰り返しているとして、早期の制圧が望まれました。
この時ライン地方のヴェーゼルには、スペイン軍のファン・デン=ベルフ伯ヘンドリクが展開していました。フレデリク=ヘンドリクと本隊は、ファン・デン=ベルフ伯軍のオルデンザール救援を妨げるため、近郊のイッセルブルクに本陣を設けます。そしてオルデンザールの攻囲は、元帥のナッサウ=ディーツ伯エルンスト=カシミールに全面的に任せることにしました。冒頭にも書いたとおり、この3人はそれぞれが従兄弟同士です。
戦闘
オルデンザールの守備隊は約800、その10倍の8000の兵でオルデンザールに着いたエルンスト=カシミール将軍は、街の様子や地形、そして本隊がスペインの救援軍を押さえていてくれていることなど複数の要素を勘案し、大規模な環状包囲を敷く必要はないと判断します。代わりにベテランの技術者を呼び、最も効果的な布陣計画をたてました。街の周りには2ヶ所のダムがありましたが、この2ヶ所に砲撃陣地を設け、街への水の供給を遮断しながら砲撃をおこないます。わずか8日で、街は連邦議会との和平案を呑み、スペイン守備隊は名誉ある撤退を許されることになりました。1597年のマウリッツ公の遠征、1605-1606年のスピノラ侯の遠征を思わせるような、スピード開城です。
Unknown (1649-1651) ハウス・ラーゲの破壊 In Wikimedia Commons
エルンスト=カシミール将軍はこの攻囲戦の最中、古参の部下である大隊長カスパール・ファン・エーウスムに、北上して「ハウス・ラーゲ」と呼ばれる城を焼き討ちするよう許可を出します。ここに住むラーゲ領主のケトラー家は城を防衛拠点としてスペインに提供しており、200名のスペイン兵を守備隊として雇っていました。また、近隣の野盗たちを匿って、エルンスト=カシミールが州総督をしているフリースラント各地にダメージを与えているとも噂されていました。ファン・エーウスムはここを急襲して占拠し、翌日にはケトラー一家を家財道具一切を持たせて追い出します。そして城の地下に残された火薬ともども、城を爆破しました。
余波
オランダはすぐにオルデンザールの街の防衛を強化しました。その際、中世の頃から残されている高い外壁の一部は、取り壊されずそのままにされました。街はオランダの手に帰しましたが、いまだ周辺には盗賊の類がうろついており、そういった小集団からも街を守る必要があったためです。
フレデリク=ヘンドリクの本隊の側では、エルンスト=カシミールの軍が出発した直後から、ファン・デン=ベルフ伯の陽動作戦を受けていました。が、ほどなくエルンスト=カシミール軍が戻り、その後も散発的な小競り合いがしばらく続きましたが、大規模な衝突に発展することはありませんでした。
ハウス・ラーゲの廃墟 In Wikimedia Commons
そして翌1627年には計画のもう一方の街、フロールの攻囲戦が実行に移されます。ここに至ってはじめて、フレデリク=ヘンドリクはその個人としての軍事的名声を得ることになります。
リファレンス
- Kikkert, “Frederik Hendrik”
- Poelhekke, “Drieluik”
- Wilson, “Thirty Years War”
- Prinsterer, “Archives”
- Picart, “Memoires”