えほん「きたかぜとたいよう」(1602) ~アルプレヒトでんかとマウリッツかっか

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みんなもよくしってるイソップどうわを、80年せんそうバージョンにしましたよ。

*原文はウィキソースのパブリックドメインを用いました。
『イソップ童話集』太陽と風
作者:イソップ(Aesop)
訳者:菊池 寛
底本:興文社 文藝春秋社 昭和2年『小学生全集』

アルプレヒトでんかとマウリッツかっか

Archduke Albrecht (1559-1621) - Circle of Peter Paul Rubens Michiel Jansz van Mierevelt - Maurits van Nassau, prins van Oranje en Stadhouder

アルプレヒトでんか(左)とマウリッツかっか(右) In Wikimedia Commons


あるとき、スペイン軍のアルプレヒトでんかと、オランダ軍のマウリッツかっかとが、たがいに力じまんをはじめましたが、どちらも、自分の方がえらいと云いはって、いつまでたっても、はてしがありません。

すると、マウリッツかっかが、ふと、きゅうりょうをもらえずはんらんをおこしているスペインのへいしたちを見つけて、

「それじゃアルプレヒトでんかさん、ひとつ、あのはんらん軍たちの立てこもっているまちの門を、どっちが早くあけられるか、ためして見ようではありませんか。まず、君からやって見たまえ。」

と、云いました。

そこでアルプレヒトでんかは、

「そんなことは何のぞうさもない」

と、云って、はんらん軍めがけて、ありったけの力で、ひゅうひゅうまくしたてました。

「なかまのくびをもってきた者だけゆるしてやってもいい。へいし1人のくびにつき10クラウン、しょうこうのくびで50クラウン、もっとえらいしょうぐんのくびなら200クラウンでどうだ。」

ところが、はんらん軍は、まちの門をあけるどころか、云えば云うほどじゅうややりをかまえて、門をしっかりと両手でおさえてしまいました。

マウリッツかっかはそれを見ると、

「さあ僕の番だ。よく見て居たまえよ。」

と、云いながら、さいふの間からきんかを出して、あたたかい光を、一面に、そそぎかけました。

「スペインのふつうのきゅうりょうの2分の1しか出せないが、ぜんいんをオランダ軍でやとおう。口やくそくじゃないぞ。いますぐ、キャッシュでしはらえる。」

すると、はんらん軍は、きゅうにみんなでお金をもらえることになったので、ほっとしたように、門をあけました。

アルプレヒトでんかは、

「まけた、まけた。」

と、云いながら、ブリュッセルへ、にげて行ってしまいました。

 

脚注(のようなもの)

1602年は…

が絶賛開催中です。何ヶ月も給料が払われないので、3500人のベテラン騎兵たちがホーホストラーテンの街に立て籠もって、オーストリア大公アルプレヒトと交渉をしていました。