“Lion’s Share” (1922) In Wikimedia Commons
みんなもよくしってるイソップどうわを、80年せんそうバージョンにしましたよ。
*原文はウィキソースのパブリックドメインを用いました。
『イソップ童話集』獅子と驢馬と狐
作者:イソップ(Aesop)
訳者:菊池 寛
底本:興文社 文藝春秋社 昭和2年『小学生全集』
アルバこうとエグモントはくとオランイェこう
「アルバこう(中)はエグモントはく(右下)をひきさいてしまいました」 In Wikimedia Commons
アルバこうと、エグモントはくと、オランイェこうが、いっしょに狩に出かけました。
すると、まずオランイェこうが、一ぴきの大きな鹿をみつけました。そこでエグモントはくがそれを追いかけると、アルバこうはすばやく前方にまわって、うまく鹿をいけどりました。
そこで三にんはそこへあつまって、さて鹿をたべるという段になると、アルバこうは、その分け方をエグモントはくに命じました。
エグモントはくは、たいへん苦心して、その鹿をきっちり三つに分けました。そして汗をふきふき、
「さあ、おあがり下さい。どれをおとりになっても、おなじです。」
と、いいおわらないうちに、アルバこうはとびかかって、ものもいわずエグモントはくをひきさいてしまいました。エグモントはくがアルバこうの分を、とくべつたくさんにしなかったことが、アルバこうの気にさわったのでした。
アルバこうは今度はオランイェこうに、
「おまえが分けてみろ。」
と、いいますと、オランイェこうは、自分はほんのわずかとって、あとをすっかりアルバこうのまえにさし出しました。するとアルバこうは大げんきで、
「ふん、なかなかおまえはかしこい奴だ、だがこの分け方を、だれにおしえてもらったのだ。」
と、ききますと、オランイェこうは、
「はい、このエグモントはくの死骸からおそわりました。」
と、こたえました。
脚注(のようなもの)
1568年は…
アルバ公の「血の法廷」
が絶賛開催中です。危険を察知していち早く亡命したオランイェ公ウィレムは助かりましたが、エグモント伯とホールネ伯は捕まって斬首刑にされてしまいました。